璽4(N4)スガワラノミチザネノカミ(菅原道真神)

【右大臣まで昇進した学問の神】

学問の神で天神様(雷神)と呼ばれる「菅原道真公(すがわらのみちざね)」をお祀りしている神社は「天満宮」や「天神社」で全国各地に1万社を数えるほど広く信仰されていますが、天神が菅原道真と習合され始めたのは道真公没後の平安時代のことです。

59代宇多天皇(うだてんのう)から寵愛された文武両道の道真公は、朝廷における文官の中心的な立場になり、宇多天皇に娘を嫁がせるなどご皇室の中でも存在感を大いに発揮していきました。

その後、宇多天皇の御子である60代醍醐天皇(だいごてんのう)の御代においても、破格の昇進を続け右大臣にまで昇りつめた道真公でしたが、左大臣であった藤原時平(ふじわらのときひら)の謀によって京を追われ、昌泰4年・延喜元年(901年)大宰府へ左遷されてしまいます。

失意の中にあった道真公が京の都を去る時に、日頃からとりわけ愛でていた梅の木を詠んだ「東風(こち)吹かば 匂ひをこせよ

梅の花主なしとて春な忘れそ」は有名です。その梅が、京の都から一晩にして道真公の住む屋敷の庭へ飛んできたという「飛梅」の伝説があり、この梅は太宰府天満宮(福岡県太宰府市)に今もご神木として残っていて、各地の天満宮や天神社にも株分けされてます。

ちなみにオランダで最も歴史のある国立大学ライデン大学には、上記の道真公の梅の詩が刻まれた壁があり、日本とオランダとの古い交流の象徴とされています。

左遷後は、大宰府政庁の南側にあった大宰府浄妙院で謹慎していましたが、延喜3年(903年)2月25日に大宰府で薨去し、安楽寺廟に葬られました。

この時に住んでいた大宰府浄妙院は現在、榎社(えのきしゃ)となっていて、道真公を刺客から匿い日夜世話したという浄妙尼(じょうみょうに)(もろ尼御前)がお祀りされています。

 

道真公の左遷後、政敵・藤原時平は妹の穏子(おんし)を醍醐天皇の中宮とするために入内させて天皇との関係回復に努め、皇室への権力強化へ意欲をみせていきます。

ところが、道真公の死から3年後、道真公の後任として右近衛大将に就任した藤原定国(ふじわらのさだくに)が謎の死を遂げたのをはじめ、延喜9年(909年)に藤原時平が突然死するなど関係者に不幸が続きました。これ以降、宮廷の中で道真公の怨霊の噂が取り出されると、時平の死から4年後、時平派で道真の後任として従二位に就いた源光(みなもとのひかる)も鷹狩りの最中、泥沼に落ちたまま行方不明になる事故が発生。

延喜23年(923年)、醍醐天皇の皇太子、保明(やすあきら)親王が亡くなると、道真の怨霊を鎮めるため、道真の霊を右大臣に復帰させるとともに、正二位を贈りました。しかし、続いて皇太子となった慶頼(よしより)王も2年後に死亡してしまいます。

そして極めつけが延長8年(930年)に発生した清涼殿落雷事件。この日、清涼殿では干魃(かんばつ)の対策会議を大雨の中で開いている最中で、一瞬の閃光と轟音とともに清涼殿に雷が落ち、続いて雷は紫宸殿にも落ち、宮廷内は逃げ惑う公家、女官らで大混乱となり、時平派だった大納言・藤原清貫(きよつら)が落雷の直撃で即死するなど、他にも要人に多数の死傷が出てしまいました。

死の穢れを嫌う概念が強くあった時代に、これだけ多くの死人が宮中に出たことは大変なことだったはずです。それ故、このとき難を逃れた醍醐天皇も、落雷事件のショックで3カ月後、ついに崩御してしまう事態になってしまいました。

 

もともと北野の地に火雷天神(からいてんじん)が地主神として祀られていたため、清涼殿の落雷事件以後、都人から“雷神”として畏怖されていた道真公と結びつき、天神=道真公とされるようになったとされています。

こうして、道真公の荒魂を鎮めるため天暦元年(947年)、北野の地に朝廷が社殿を造営し、道真公を祀ったのが北野天満宮(京都市上京区)の始まりとされ、道真公死後44年を経て、ようやく平静を取り戻しました。

また落雷事件に先立って、醍醐天皇の勅命により、道真が亡くなった大宰府の墓所の地には、安楽寺廟天満宮(のちの太宰府天満宮)が建てられました。

その後も怨霊として天満大自在天神(てんまんじざいてんじん)、日本太政威徳天(にほんだいじょういとくてん)などとも呼ばれ恐れられた道真公でしたが、次第に慈悲の神としての信仰に変わり、さらに歌人、学者としての面がクローズアップされた江戸時代ごろから、庶民の間でも学問の神として信仰されるようになったといいます。



【神格】

学問神

 

【御利益】

学業成就、縁結び、豊穣、生業繁栄、家内安全、厄除け、開運招福、交通安全

 

【別称】

天神、天満大自在天神、雷神、火雷天神、日本太政威徳天、実道権現

 

【系譜】

不明

 

【祀られている神社】

北野天満宮 (京都市上京区)

大宰府天満宮 (福岡県太宰府市)

ほか全国の天満宮、天神社、菅原神社、北野天神社など

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