璽3(N3)イザナキノミコト(伊耶那岐命)

【神世七代の最後に現れた創造の神】

天地開闢の際に現れたアメノミナカヌシをはじめとする五柱の神々を別天津神(ことあまつかみ)といいます。これらに続いて現れたのが「神世七代(かみのよななよ)」の神々で、その一番最後に生まれたのがイザナキとイザナミです。最初に夫婦の契りを交わした神とされ、先に現れた別天津神は、男女の区別がない独神(ひとりがみ)でしたが、イザナキは男神、イザナミは女神という明確な男神女神の区別が出来てきました。夫婦となったイザナキとイザナミは日本国土を産むと、次に森羅万象の神々を産み出しました。これが「国生み、神生み」と呼ばれています。

しかし、妻イザナミが火の神であるヒノカグツチを産んだ際に火傷が原因で死に至り、死者の国である「黄泉の国」へ旅立ってしまいました。イザナキは悲しみと怒りのあまりに、そのヒノカグツチを剣で斬り付けます。妻が死んだことを受け入れられなかったイザナキは、黄泉の国まで迎えに行き、妻が籠る御殿の前まで辿り着くと、自分のもとへ戻ってくるよう声をかけました。イザナミは「こちらの食物を食べたからもう戻れない」と答えましたが、イザナキは諦められず「なんとか戻ってきてほしい」と懇願します。

すると彼女は「それではこちら側(黄泉の国)の神様に相談するから、しばらく待っていて下さい。しかし、その間、決して中を覗かないでください」と頼みました。

待っていたイザナキでしたが、一向に戻ってくる気配が無いのが心配になり、約束を破って中を覗いてしまいます。すると、そこには腐敗し体中にウジが湧き、雷神が憑りついて変わり果てた妻イザナミの姿があったのでした。その姿を見るなりイザナキは慌てて逃げだしてしまうと、激怒したイザナミは雷神と黄泉の軍を放ちイザナキを追いかけました。

一方のイザナキも、髪飾りから生まれた葡萄、櫛から生まれた筍、黄泉の境に生えていた桃の実を投げて抵抗し、どうにか難を逃れます。最終的にはイザナミが自ら追いかけてきましたが、イザナキは黄泉の国の出口を大岩で塞いでしまったのでした。

この時イザナキは、美しかった妻の変わり果てた姿と鬼のような形相に怖気づいてしまったのです。イザナミは「見ないでほしいと」約束しておいたにも関わらず、その約束を破ったイザナキに激怒し、「愛しき我が夫よ。このような事をするなら、あなたの国の人間を1日1000人くびり殺します」と叫び、イザナキは「愛しき我が妻よ。それならば、私は1日1500個の産屋を建てよう」と言い返しました。

愛し合っていた二人は、別れの間際に女神であるイザナミから声をかけます。憎しみや怒りに囚われてイザナギを追いかけていたイザナミですが、愛しく思う夫の事を忘れられず「愛しき我が夫よ」と声を掛けます。しかも「女性から声をかけると失敗する」と高天ヶ原の神々から忠告があったにも関わらず。

やはり、どれだけ怒りに我を忘れようとも、愛する人に対する想いが抑えられることは無かったのです。つまり、大岩を挟んでの夫婦の問答の結果は「失敗する」ということを暗示していると言えるのではないでしょうか。高天ヶ原の神々の忠告通りであれば、女性から声をかけたので、イザナミは「1000人くびり殺す」ことも出来ないでしょう。

永遠の別れを告げた夫婦神ですが、最後の最後にはお互い自らの過ちを悔い、再び愛に目覚めたのでした。結婚、死別、対立を経てイザナミは死を、イザナギは生を体現した神となります。



【神格】

創造の神

 

【御利益】

夫婦円満、国家守護、商売繁盛、家内安全、厄除け、富貴栄達

 

【別称】

多賀大神

 

【系譜】

神世七代の七代目

 

【祀られている神社】

伊弉諾神宮 (兵庫県淡路市多賀)

おのころ島神社 (兵庫県南あわじ市)

多賀大社 (滋賀県犬上郡多賀町)

江田神社 (宮崎市阿波岐原町)

筑波山神社 (茨城県つくば市筑波)

佐太神社 (島根県松江市)

三峰神社 (埼玉県秩父市三峰)

英彦山神宮 (福岡県田川郡添田町英彦山)

白山比咩神社 (石川県白山市三宮町)

玉置神社 (奈良県吉野郡十津川村)

雄山神社 (富山県中新川郡立山町)

丹生川上神社 (中社) (奈良県吉野郡東吉野村)

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