【荒ぶる神であり八岐大蛇を退治した英雄神】
スサノオはイザナキが禊をした際に鼻から生まれ、同時に生まれた姉アマテラス、兄ツクヨミと共に「三貴子(さんきし/みはしらのうずのみこ」と呼ばれる尊い神様です。
しかし、三貴子の中でも荒神がスサノオ。
当初、父イザナキはスサノオに海の統治を任せますが、黄泉の国にいる母親(イザナミ)に『会いたい会いたい』と泣いてばかりいました。呆れ果てた父は、育て方を間違えたと後悔し、高天の原を去るよう一喝したのでした。
このことで父イザナキは隠居し、近江の多賀大社(滋賀県犬上郡多賀町)に鎮座されましたが、イザナキにとっても我が子に対する命がけの叱責だったのです。
国を去る前にスサノオは姉のアマテラスへ挨拶しようと向かいましたが、地鳴りを轟かせてやって来る荒神スサノオの異様な雰囲気を感じた高天原の神々は「国を乗っ取られるのでは?」と恐れを抱きました。
スサノオは身の潔白を証明するため誓約(うけい)という儀式をアマテラスとしますが、その後、アマテラスが岩戸に隠れてしまうきっかけとなる事件を起こしてしまい、葦原中国(あしはらなかつくに/出雲)へ追放されてしまうのでした。出雲に降り立ったスサノオは、大蛇に命を狙われ怯えている娘と老夫婦を助けるために高志のヤマタノオロチ退治に向かいます。
怪物退治の準備として、まずスサノオは、娘を櫛に姿を変えさせ、その櫛を自らの髪に刺し、夫婦に何度も醸造した強い酒を造らせ、周囲に垣根を造り廻らし八つの門を作り、門にそれぞれ酒を満たした桶を設置し怪物ヤマタノオロチを待ち受けます。この時に櫛にした娘がクシナダヒメで「櫛になった姫」や「奇(くし)なる稲田の姫」という意味で名付けられたとされます。
準備万全で待っていると、巨大な蛇が姿を現します。それこそ頭と尾が八つあり目が赤く不気味に光るヤマタノオロチでした。
スサノオは、ヤマタノオロチが酒を飲み酔いつぶれ眠りだした隙をつき、十拳剣(とつかのつるぎ)で斬りかかります。流石の大蛇も酔っ払い虚を突かれてしまっては敵いません。スサノオは見事にヤマタノオロチを退治し一躍英雄となったのでした。
退治したヤマタノオロチの尻尾から三種の神器である「草薙の剣(くさなぎのつるぎ)」を手に入れ、この剣をアマテラスに献上したとあり、これは熱田神宮のご神体の御剣でもあります。
そして、大蛇の脅威から救ったクシナダヒメを妻として迎えると共に、新居として住む場所を出雲の国に決め、須賀(島根県雲南市)に宮殿を造りました。これがスサノオと妻クシナダヒメを祀る須我神社(島根県雲南市)の起源とされます。
スサノオは一見すると粗暴で傍若無人ですが、実は心優しく家族を大切にする神様で、それ故に、愛娘スセリビメが心を寄せるオオクニヌシに対して様々な試練を与えたのでしょう。失敗に失敗を重ね続け、周りに天災を齎す荒ぶる神ですが、どこか人間的で憎めない。スサノオは心は優しい神様だと思います。
母を慕い、妻を愛し、娘を想う。スサノオの家族を想う気持ちは、最後の最後まで一貫していました。多くの人が使命と家族への想いの中で、もがき苦しみ、本来の生き様とは異なる道を歩みがちです。
スサノオのように何度も失敗を重ねても、いつかは自分本来の心に出会う事が、人の人生そのものと言えるのではないでしょうか。
【神格】
豊穣神、防災除疫の神、歌人の神、冥府の神、荒ぶる神の祖
【御利益】
水難、火難、病難除去、五穀豊穣
【別称】
素戔嗚尊(すさのおのみこと)、健速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)、牛頭天王(ごずてんのう)、祇園様(ぎおんさま)、天王様(てんのうさま)
【系譜】
イザナギの子、子はウマノミタマ、イソタケル、オオトシ、ヤシマジヌシノカミなど
【祀られている神社】
八坂神社 (京都市東山区祇園町)
氷川神社 (埼玉県さいたま市大宮区)
津島神社(愛知県津島市神明町)
熊野本宮大社(和歌山県田辺市本宮町)
日御碕神社(島根県出雲市大社町日御碕)
須佐神社(島根県出雲市佐田町)
その他、全国の八坂神社、氷川神社、祇園社など