鏡3(A3)タケミカヅチノカミ(建御雷神)

【タケミカヅチ/交渉に赴いた高天原最強の武と剣の神】

高天原の剣と武と火の神であるタケミカヅチは、鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)、春日大社(奈良県奈良市)のご祭神として知られています。出雲の武神タケミナカタと並び相撲の祖神とされる他、剣の神フツヌシと共に、武運、必勝の神として武道場に祀られ武芸全般の守護神として信仰されています。

創造の夫婦神イザナキとイザナミでも難産だったのが火神ヒノカグツチ。この神は生まれた時に母イザナミに大火傷を負わせ、その火傷が原因でイザナミは死んでしまいます(神避り)。愛する妻を失ったイザナキは怒り、息子ヒノカグツチを十拳剣で斬り付け、その十拳剣に付いたヒノカグツチの血が岩に滴り落ちて産まれたのがタケミカヅチ。

このタケミカヅチは国譲りの際、高天の原の最後の使者として出雲のオオクニヌシと交渉をした神でもあり、剣の神様フツノミタマや『日本書紀』に出てくる剣の神フツヌシは、タケミカヅチの別名ともされてます。

また、古来より地震を引き起こすオオナマズを踏みつけ、地震を制御し鎮める役割も担っていると考えられ、鹿島神宮の要石がその象徴といえます。

国譲りの為にアマテラスが幾度も使者を遣わせますが、ことごとく失敗に終わりました。

しかし、最後に交渉をまとめ国譲りを成功させたのが武神タケミカヅチ。武神でありながら武力を行使せず次のようなアマテラスの言葉を伝えました。

「我は高天原からの遣いである。汝がうしはけるこの葦原中津国は、我が御子の知らす国と仰せである。汝はどのように考えるか。」

この「うしはける」(領はける)とは、争う事、武力によって国を治めることを意味し、うしはくがまかり通ると、民衆は権力者や強者の所有物になってしまい、いわゆる独裁国家となります。これからは独裁ではなく「シラス国」だと伝えたのです。この「シラス国」は天津神の御心と一つになり、国の大事は広く民に知らせ、民衆が主役となる慈愛に満ちた国のことです。この言葉を聞いてオオクニヌシは信頼する息子たちに決断を委ねます。

タケミカヅチはオオクニヌシの息子の一人であるコトシロヌシと交渉すると、コトシロヌシは「我が国は天津神に譲りましょう」とすんなり受け入れました。

しかし、もう一人の息子タケミナカタが大岩を軽々持ち上げてやって来ると「誰だ、我が国に来てコソコソしているのは!我と力比べをしようではないか!」と迫り、タケミカヅチに抵抗し、力比べをする事に。この時の力比べが相撲の起源と云われ、出雲が国技相撲の発祥の地である由縁です。

互いに組み合いますが、タケミカヅチの手が氷や剣に変化し、さすがのタケミナカタも屈服し、敵わぬとみるや諏訪の地に逃げ込み降参しました。軍配はタケミカヅチに上がり、国譲りの交渉は成立したのでありました。

タケミカヅチは、武力のみに頼るのではなく、忠義に従い、アマテラスから言い渡された言葉をしっかりと伝え、天津神の御心と一体となり交渉し、それでも交渉が滞った時には、無駄な武力を使わず力比べで解決しタケミナカタを納得させました。

また、タケミカヅチは勝負に勝つ事よりも、勝った後に遺恨が残らないように相手の力を受け止めたのは、まさに横綱相撲をしたともいえます。

もし、ここで圧倒的な武力によって国を奪ったならば、それは「うしはく」の国造りと何も変わりません。タケミカヅチは、そのことをよく分かって交渉に赴いたのです。まさに徳を備え、戦わずに勝利を掴む武神がタケミカヅチです。

 



【神格】

剣神、武神、軍神、雷神

 

【御利益】

武運長久、開運招福、厄除け、国家守護、商売繁盛、富貴栄達、航海守護、必勝祈願、災害抑制

 

【別称】

建雷命、鹿島神、建布都神、豊布都神

 

【系譜】

イザナキの十束剣(天之尾羽張)に斬られたカグツチの血から生まれる

 

【祀られている神社】

鹿島神社 (茨城県鹿島市)

春日大社 (奈良市春日野町)

石上神宮 (奈良県天理市布留町布留山)

真上神社 (秋田県男鹿市)

古四王神社 (秋田市寺内字児桜)

鹽竈神社(宮城県塩釜市一森山)

椋神社 (埼玉県秩父郡吉田町)

益子 鹿島神社 (栃木県芳賀郡益子町)

御穂神社 (東京都港区芝)

鹿島神社 (島根県出雲市)

全国の鹿島神社、春日神社など

鹿島神社