剣2(D2)オオクニヌシ(大國主大神)

【多くの女神との伝承を残す国津神】

オオクニヌシは出雲大社(島根県出雲市)のご祭神で、出雲の開拓神、ご縁結びの神様として知られていますが、実は「医療の祖神」でもあります。そのため出雲は医療発祥の地ともされ、昔から医療関係からも信仰される神です。そしてオオクニヌシは、根の国の王スサノオの血統を受け継いだ正統後継者なので「幽世(かくりよ)の神」という側面もあります。しかし、若き頃は優しさと優秀さ故に、兄である八十神(やそがみ)達の嫉妬をかって幾度も命を狙われ殺されてしまいます。

その伝承で有名なのが「稲羽の白兎」。オオクニヌシは兄の八十神たちと共に、巷で美しいと評判の稲羽のヤガミヒメに会い行く道中、サメに嘘をついたために皮を剥ぎ取られた一匹の裸の兎(因幡の白兎)と出会います。兄たちは、「海水を体にかけ、風に当たると良い」と助言し、兎がその通りにすると、傷に海水がしみ込んで、さらに苦しんでしまいますが、オオクニヌシが苦しんでいる兎を治療法を伝授した結果、兎は瞬く間に回復しました。

傷が癒え喜んだ兎は「あなたこそがヤガミヒメと結ばれるでしょう」と告げ、その予言通り、オオクニヌシはヤガミヒメと結婚することになりますが、それを知った八十神は嫉妬で怒り狂い、オオクニヌシを罠にはめて殺してしまいます。

オオクニヌシの死を知り悲しんだ母親が、天津神に頼み蘇らせて貰いましたが、それでも兄たちは幾度もオオクニヌシを殺し、そのたびに母親が天津神に懇願し蘇らせてもらいます。

八十神から逃れようとオオクニヌシと母親が最後に頼ったのは、根の国の王スサノオでした。オオクニヌシは根の堅洲国まで逃げ込むと、そこでスサノオの娘スセリビメと両想いになり、スサノオに認められようと様々な試練を乗り越え成長します。最終的にスサノオは、オオクニヌシを婿として認め、スセリビメと一緒になることを許したのでした。さらに、自らの剣と弓矢を用いて葦原の中津国の統治を託します。

根の国から帰ってきたオオクニヌシは、スサノオから授かった剣と弓矢もあり、なんとか八十神達を退けると、常世の国からやって来た小人神スクナビコナと共に、国造りを行いました。

国が完成しようとした時、相棒スクナビコナは去ってしまいオオクニヌシは狼狽えます。しかし、「大和国の三輪山に、我を丁重に御魂を祀れば、この国を完成させよう」と告げる神が現れ国造りを果たします。この神は三輪山に祀られている「オオモノヌシ」といい、大神神社(奈良県桜井市)のご鎮座の縁起です。出雲大社の祝詞の最後に「奇魂(くしみたま)幸魂(さちみたま)守給(まもりたまえ)幸給(さきはえたまえ)」と唱えます。

オオクニヌシとオオモノヌシは同一の神ともされ、出雲大社においてもオオモノヌシ(奇魂・幸魂)をお祀りされているのです。

このように様々な試練に打ち勝ち、その想いが認められたことで国造りが成し遂げられました。

オオクニヌシが結婚した女神は、自分の兄神達と争って得たヤガミヒメ、スサノオの娘のスセリヒメ、高志国のヌナカワヒメ、宗像三女神のタギリヒメ、コトシロヌシを生んだカムヤタテヒメ、ヤジマムジの娘のトトリノカミなど多く、御子神は『古事記』に180柱、『日本書紀』では181柱と記されています。

一夫多妻の象徴的な愛欲神ですが、艶福は豊穣神としての霊力の象徴です。この出会いの多さが縁結びの神として祀られている理由なのでしょう。




【神格】

国造りの神、農業神、商業神、医療神、縁結びの神

 

【御利益】

縁結びの神、病気平癒の神、産業開発の神、商売繁盛の神

 

【別称】

宇都志国玉神(うつしくにたまのかみ)大物主神(おおものぬしのかみ)大己貴命(おおなむちのみこと)、葦原色許男神(あしはらしこおのかみ)大穴牟遅神(大な無知の神) 八千矛神(やちほこのかみ)

 

【系譜】

スサノオノミコトの六世の孫

 

【祀られている神社】

出雲大社 (島根県出雲市)

出雲教 (島根県出雲市)

大前神社 (栃木県真岡市)

大國魂神社 (東京都府中市)

気多大社 (石川県羽咋市)

気多本宮 (石川県七尾市)

小国神社 (静岡県周智郡)

日吉大社 (西本宮、滋賀県大津市)

砥鹿神社 (愛知県豊川市)

出雲大神宮 (京都府亀岡市)

砥鹿神社 (愛知県豊川市)

愛宕神社 (京都府亀岡市)

一宮神社 (福知山市)大国主神社(大阪府大阪市)

道明寺天満宮・元宮土師社 (大阪府藤井寺市)

大神神社 (奈良県桜井市)

薬師神社  – 全国各地

ほか、全国の出雲神社

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